STEM CELL
コッツフォード 良枝

幹細胞治療にアンチエイジングは期待できる?方法や効果について解説

アンチエイジングという言葉をよく聞きませんか?近年アンチエイジングを幹細胞治療で実現できるのではないかという考えも現れてきています。
今回は、アンチエイジングと幹細胞治療の関係性を紹介し、そのメカニズムや治療方法、治療実績があるのであればアンチエイジング効果の持続性までお伝えします。

アンチエイジングとは

アンチエイジング (anti-aging) とは老化に抗うこと、つまり年齢を重ねるに連れて生じる様々な老化現象に対抗することで、若いときの状態を保つことを意味します。
抗老化や抗加齢化と言われることもあります。イメージとしてはシミ、シワ、たるみの改善といった美容外科学の観点から多く使われる言葉です。

最近ではアンチエイジング医学という言葉を耳にする機会も増え、動脈硬化や白内障、アルツハイマー病など加齢と関連のある疾患の発症確率を下げることを目的とした医学分野です。

アンチエイジングのメカニズム

老化・加齢化とは

アンチエイジングの前に、そもそもエイジングとは何かを説明します。
生き物は生まれてから成長を続けて身体的に成長していきます。成熟した後はそれ以上成長することは難しく、衰えていくばかり、つまり老化をしていく一方ということになります。
具体的には腎臓や肝臓の働きが衰えたり、筋肉量の低下、皮膚のシワや乾燥などが起こります。これら年齢を重ねるにしたがって起こる変化を老化もしくは加齢化と呼びます。

なぜ老化・加齢化が起こるのか

老化現象が起こる原因は未だ不明な部分が多く、いくつか考えられています。
例として、体内で酸化反応や糖化反応が起きること、細胞分裂するときに遺伝子的な異常を修復できずにそのまま分裂してしまうことなどがあります。

皮膚を例にすると、線維芽細胞と呼ばれる細胞の数減少にともなうコラーゲン産生量の減少や、太陽の光を浴び続けることで皮膚で酸化反応を引き起こし、最終的にメラニンが産生されることでシミができてしまいます。
また、体に糖分が多く存在する状態が長期間続くと皮膚に存在するコラーゲンを糖化、つまり変性させてしまい、これが肌のハリを失う原因になってしまいます。

アンチエイジングの方法

アンチエイジングはさまざまな老化現象に対して予防的なアプローチをとることが一般的に行われています。個人で簡単に実践できるものから、医師や栄養士が介入して行うものまで幅広く取り組まれています。

例えば、糖分を摂取することは生きていく上で必須ですが、摂りすぎは老化を促す原因になります。そこで、糖分を摂りすぎないよう普段から食事を気を遣うこともアンチエイジングの一手法と言えるでしょう。

また、日光の浴びすぎもシミやシワ、つまり老化現象の原因であることが知られています。したがって、日焼け止めを塗ったり日傘を差すこともアンチエイジングの実践です。
ただ、最近ではすでに起きている老化現象に対しても効果がある手法もあり、その最たる例が再生医療です。まだ実験段階のものも多くありますが、幹細胞を使って臓器の衰えた機能を回復させたり皮膚のシワやシミを改善する効果も報告されています。

幹細胞治療とアンチエイジングの関係性

幹細胞は少し特殊な細胞で、同じ幹細胞を増殖させる能力と、各組織の形や機能の維持を担う他の細胞に変化する能力を持っています。
幹細胞が十分に働かなくなると、各組織の機能が落ちていくことになります。
年齢を重ねていくと幹細胞の増殖が低下してしまい、これが老化の原因とも考えることができます。つまり、幹細胞が体内に増えれば組織の機能を維持することに繋がり、これは老化現象に抗うこと、すなわちアンエイジングということになります。

幹細胞治療を行う方法

体の至る場所に幹細胞は存在しますが、幹細胞治療で用いる幹細胞は主に脂肪組織中の幹細胞を使います。
自身の脂肪組織を少量採取した後、一定期間特別な環境に置くことで脂肪組織の中に含まれる幹細胞が増えていきます。
十分に数が増えた幹細胞を直接注射することで顔のシワやたるみが改善します。ここで区別しなければならないのが「幹細胞」と「幹細胞培養液」です。

幹細胞はその名の通り細胞を意味しますが、幹細胞培養液には幹細胞自身は含まれていません。幹細胞培養液には成長因子と呼ばれる細胞の増殖などを促進する物質が多く含まれており、アンチエイジング効果は報告されています。

治療効果はあるの?

幹細胞治療が注目される以前はヒアルロン酸・ボトックス注射や腹部や太ももの脂肪組織をシワなど老化が気になる部位に移植する方法が用いられていました。
この方法でも十分な効果は得られますが、移植した脂肪組織が上手く馴染まないといつの間にか治療前の状態に戻ってしまうことが多くありました。

それに比べて脂肪幹細胞を注射する方法はシワに対する改善効果が顕著であることも分かっており、脂肪組織移植と脂肪幹細胞注射を併用することで相乗的効果も得られるという報告があります。
また、幹細胞培養液も用いた治療でもシワ改善効果はあることが分かってます。つまり、幹細胞治療はアンチエイジング効果があると考えられています。
他にも、自身の他組織から採取し培養した幹細胞を大腿骨に注入すると、骨密度が上がることが分かっています。これは、老化現象が引き起こす疾患のひとつである骨粗鬆症に対しての治療効果が期待できます。

治療実績について

日本では、幹細胞治療の実施に関して厚生労働省に届出を行い許可を受ける必要があります。さらに、定期的に実績を報告をする義務があり、医療行為として認められない場合は幹細胞を使った治療を行うことができなくなります。
つまり、幹細胞治療の実施に関して許可を受けている医療機関はきちんとした実績を持っていることになり、安心して治療を受けることができます。

アンチエイジング効果の持続性

現在、美容医療において幹細胞治療に用いられている幹細胞は体性幹細胞のみです。
体性幹細胞は分化できる細胞の種類が多くないため、目的の組織に合わせた体性幹細胞を準備する必要がありますが、がん化するおそれは非常に低いことが知られています。

また、基本的には自身の細胞を使うためアレルギー反応を起こす可能性も非常に低いこと、そして細菌やウイルスに感染していないか確認した細胞のみを治療に用いるため安全性は高い治療法であると言えるでしょう。

まとめ

アンチエイジングという考え方は健康的な生活を少しでも長く続けるためには非常に重要です。食生活の見直しや適度な運動などもアンチエイジングの一環として欠かすことはできませんが、幹細胞治療は今までの方法より優れたアンチエイジング効果が期待できます。しかも、幹細胞治療は今後も発展し続けるであろうアンチエイジングに対するアプローチで、より優れた幹細胞治療法が開発されるかもしれません。

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WRITER

医院長 コッツフォード 良枝 YOSHIE COTSFORD
2007年山梨大学医学部卒業、その後国際医療センター国府台病院で初期研修。研修後は日本医科大学麻酔科に入局し勤務。その後、大手美容クリニック勤務ののち、一般皮膚科、美容皮膚科などの勤務、院長勤務などを経て現在はGINZA Zen禅クリニック院長。