STEM CELL
コッツフォード 良枝

幹細胞治療を用いた再生医療とは?これからの美容医療を解説

年齢によるお肌の老化で悩んでいませんか?この記事を読んでいる方は、すでに幹細胞治療についてある程度知識を持っているかと思います。

そのため、今回は再生医療における幹細胞治療の概要やメカニズム、効果について解説します。そして、実効性について現段階で確認できていることも紹介します。

再生医療についてサクッと解説

再生医療とは、「病気やけがなどで損傷してしまった組織」や「老化現象によって十分な機能を果たせなくなってしまった組織」を細胞などを使って元に戻す医療のことです。
代表的なものはヒトの細胞を使った方法です。中でも、幹細胞を使った治療法は現在の再生医療の中心となっています。

幹細胞治療について

幹細胞とは

再生医療で良く使われている幹細胞とはそもそもどんな細胞でしょうか?
幹細胞には少なくとも 3 種類、胚性幹細胞 (embryonic stem cell: ES 細胞) 、体性幹細胞、人工多能性幹細胞 (induced pluripotent stem cell: iPS 細胞) が存在することが分かっています。

幹細胞は、細胞分裂するときに同じ幹細胞になる「増殖」と性質の異なる細胞になる「分化」が起きることが最大の特徴です。
例えば、脂肪組織由来の体性幹細胞は成熟脂肪細胞・骨細胞・筋細胞・神経細胞に分化することが知られています。ES細胞は受精卵が数日間分化を繰り返してできた胚盤胞の中に存在する細胞のことで、様々な細胞に分化することができます。

体性幹細胞は体の至る組織に存在しており、ES細胞には劣るものの多くの細胞に分化することができます。iPS 細胞はヒトの皮膚などから採取した細胞を基にして作った幹細胞のことです。

幹細胞治療でできること

幹細胞治療は近年非常に注目されている治療方法ですが、未だ不明な点が多くあります。
ヒトに幹細胞治療を適用した例は 2011 年が最初で、その時は ES 細胞を使った脊髄損傷に対する治療でした。

その後、日本では患者自身から採取した幹細胞を用いて行う幹細胞治療が主流になっており、脳梗塞、変形性膝関節症、肝障害、皮膚の加齢症状など様々な症状に対して使われています。

幹細胞治療以外の再生医療について

PRP療法

幹細胞を使わない再生医療も日本で行われています。中でも、血小板を通常より多く含む血漿を用いる多血小板血漿 (platelet-rich plasma: PRP) 療法は整形と美容整形領域で使われています。

通常、血小板は血管が切れて出血をしたときに血管壁の傷を塞いでいます。この時、様々な物質が産生され、この中に組織の修復を促す効果のある成長因子という物質も含まれます。PRP 療法では、この成長因子が目的の治療効果に非常に重要な働きを示します。

再生医療等製品

再生医療の発展に伴い、「再生医療等製品」という医薬品や医療機器とは異なる分類が 2012 年に初めて定められました。
その後、再生医療等製品としていくつかの製品が厚生労働省の承認を受けて医療に使われています。その中には、患者自身の皮膚や骨、筋肉から幹細胞以外の細胞を採取し、シート状に成形して組織を修復する再生医療に用いられている製品もあります。

再生医療と幹細胞治療の関係性

幹細胞は臓器の形や機能を維持するには非常に重要な働きを持っていますが、幹細胞の増殖回数には限界があると言われており、その増殖速度も歳を重ねるにつれて減少してしまいます。

これが各組織の老化に繋がるとも考えられており、皮膚ではしわやたるみを引き起こす一因です。そこで、幹細胞治療により投与されたまだ十分に働くことのできる幹細胞が、各組織を形成している細胞に分化することで組織全体が再生していきます。
また、幹細胞培養により産生される成長因子も組織の再生に関与すると言われています。

幹細胞治療を行う方法

基本的な治療の流れ

幹細胞治療は、基本的に本人の幹細胞を脂肪組織などから採取した幹細胞を使います。
脂肪組織の場合、採取する量は数グラム程度であるため大きな負担になりにくいと言えます。採取した幹細胞をそのまま治療に使用しても十分な効果は期待できないため、特別な条件で一定期間保存することで十分に効果を発揮できる状態まで幹細胞の数を増やします。この行程を培養と呼びます。

その後は、幹細胞を治療する部位に直接注射をしたり静脈内に注射することで組織の再生を促します。
つまり、「採取→培養→投与」が幹細胞治療を行う一連の流れです。幹細胞の採取方法や投与方法、治療期間などは幹細胞医療を行っている病院・クリニックで多少異なりますので、事前に調べる必要があります。
また、医療機関が幹細胞治療を行うには厚生労働大臣への提供計画を提出することが義務づけられており、幹細胞治療を実施できる医療機関は厚生労働省のホームページで公開されています。

注意する点

自身の細胞を使った幹細胞治療は、臓器移植などとは違い拒絶反応は起こらないため安全だと言われていますが、それなりに注意が必要です。
特に、幹細胞を培養する環境が不十分である場合は培養している幹細胞の中に細菌やウイルスが混ざり込んでしまい、気が付かずに投与してしまうと感染症を引き起こしてしまいます。

厚生労働省では幹細胞培養を行う施設としての基準を設け、国内の医療機関で行う場合は同省に対しての届出、国内の医療機関以外の施設で行う場合は同省からの許可が必要となります。届出や許可に関する情報は各地域の厚生局に問い合わせることで確認することができます。

肌に対して治療効果はあるの?

皮膚組織に脂肪細胞由来の幹細胞を注入することで、皮膚組織の厚みやコラーゲン産生量が増えて、しわやたるみを改善することが報告されています。
したがって、正しい幹細胞治療を受けることで皮膚の老化現象に対する一定の治療効果はあると言えます。ただ、投与した幹細胞が定着する期間や量、さらに効果の持続期間については未だ不明であるのが現状です。

再生医療における幹細胞治療の実績

自分自身の幹細胞またはその他の細胞を使った再生医療が実施可能な医療機関は400を超えています。
具体的な件数は不明ですが、定期的に実績を報告をする義務があり、医療行為として認められない場合は治療を行うことができません。したがって、幹細胞治療の実施に関して許可を受けている医療機関は十分な実績を持っていることになり、安心して治療を受けることができます。

最近の再生医療について

幹細胞治療に用いられている幹細胞は本人から採取したものが基本です。
その一方で、iPS 細胞を用いた再生医療に関する研究が現在盛んに行われています。iPS 細胞は様々な細胞に分化することができ、その有用性が期待されています。

実際に、iPS 細胞を使って作製した網膜色素上皮細胞をヒトへ移植した実績もあります。さらに、心臓や脳疾患を対象にした臨床試験も計画されています。

まとめ

再生医療は世界中で非常に注目されており、今後も新たな治療法が開発されていくことが予想できます。
しかし、新しいものが全て良いものとは限らず、正しい知識を身につけて本当に効果があるか、安全性は問題ないかといったことを判断する必要があります。その上で、自分に合った治療方法を探していくと良いかもしれません。

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WRITER

医院長 コッツフォード 良枝 YOSHIE COTSFORD
2007年山梨大学医学部卒業、その後国際医療センター国府台病院で初期研修。研修後は日本医科大学麻酔科に入局し勤務。その後、大手美容クリニック勤務ののち、一般皮膚科、美容皮膚科などの勤務、院長勤務などを経て現在はGINZA Zen禅クリニック院長。